旬の食材をうまく使う日本料理

現在は栽培技術、交通の便の発達によってほとんどの野菜がいつでも使える大変に便利な時代になっていますが、やはり旬に取り入れられる地物といわれる野菜は、特においしくなっています。そして旬のある野菜も出回る時期が、非常に早くなっています。春の野菜の食材というと大根、ワラビ、くわい、セリ、筍、分葱、ヨモギなどたくさんの野菜が挙げられます。この中でも春の野菜の代表といえば筍です。12月に九州で掘って出荷される筍を、雪掘りと呼び高級料理店で旬の先取りとして使っています。また2月ごろ出回るものは四国で掘られるもので、寒掘り筍といいます。3月に入って紀州や京都で朝掘って出荷する筍を、朝掘りと言っていますがこの朝掘り筍は朝の夜明けを待って掘るもので、朝露で程よくえごみが取れるので掘って1時間以内なら、生で筍の刺身として食べられます。ゆでる場合でもぬかを使わず火が通る程度ゆでればよく、これは薄く切ってわさび醤油かからし醤油で食べれば最高になります。京都周辺でなければ、味わえない食材になっています。

5月以降8月末ごろの旬の食材の野菜はきゅうり、白瓜、とうがん、、茄子、枝豆、みょうが、じゅんさいなどです。夏といえば欠かせないのが枝豆です。5月の声を聴くと同時に小粒の枝付きの枝豆が九州、四国から出荷されてきます。一般の市場に出回るのが5月末から6月で、6~7月ごろ静岡や千葉など関東周辺で多量に出荷されます。この時期が枝豆の旬になっています。8月ごろは出荷場所が北のほうに移って、豆が大きくなり味もしまってきます。そして新潟地方のふっくらとしてやや平たい粒の枝豆が出回りだすと、枝豆の季節の終わりになってきます。7~8月ごろ出回るものに生じゅんさいがありますが、大阪方面から入荷する生じゅんさいは小粒で良質物と言われ、酢の物に使用されています。他に北海道、山形、秋田のじゅんさいが入荷しますがやや形が大ぶりでゆでると鮮やかな緑色になって、歯触りよくのど越しに涼を与えてくれます。いずれの野菜も旬のものは旬なりの香りと味を持っています。これが自然の食材の味になっています。

秋に出回る旬の食材の野菜は銀杏、むかご、かぶ、大根、茄子、みょうが、しめじ、なめ茸、松茸などです。日本料理は季節を特に大事にしますので、この時期しか出回らない野菜の多い秋は食材で十分季節の表現ができます。新銀杏、松茸、栗、むかごがその主な野菜になっています。銀杏は夏には新銀杏として鬼皮の柔らかいのが、市場に並びます。ゆでると色がきれいで柔らかいのですが、値段も高価でこの時期のものはまだまだ一般向きとは言えません。やはり多く出回る秋が、旬の食材になっています。松茸も7月末ごろ早松と言って沖縄から少量はいることがありますが、現在では韓国産の輸入松茸が8月に出荷されます。需要が少ないためか値段も安いのですが、日本の風情としては暑い夏には松茸はそぐわないものがあります。使いだすとしても涼風が立つ夏の終わりごろで、そのころから需要が増えて値段も上がり始めてきます。ちなみに韓国では7~8月ごろが旬になりますが、秋を彩る茸類は衣服が綿からウールのようなものに変わるころに、価値を発揮します。

11~2月ごろ鍋物がほしくなる冬にも野菜は、秋に続き多く出回っています。中でも温かい料理の主役になる大根やかぶ、イモ類に味が乗ってきます。霜が降りだすとこれらの根菜に身が入ってきます。他に白菜、キャベツ、水菜、ほうれん草、くわいやクルミも冬の野菜の食材になっています。冬が始まると一度は口にしたいのが、大根の風呂吹きとかぶら蒸しです。柔らかくゆでた熱々の大根をゆず味噌や胡麻味噌で食べる料理で、これを風呂吹きといい冬には欠かせない料理になっています。大根のほかにもかぶ、とうがん、こんにゃくの風呂吹きがあります。かぶら蒸しというのは、かぶをおろして絞り穴子、海老、銀杏、ユリ根の具におろしたかぶをのせて蒸し、葛あんをかけた蒸し物で風呂吹きと同様、熱々にして食べる料理になります。12月に入ると関東では8日、関西では13日をことはじめと呼んで正月の準備を始めますが、おせち料理に使われる料理は冬に旬を持った食材が中心になってきます。里芋、ニンジン、くわい、ふきのとうといったものが挙げられます。また漬物などは初冬から準備され、たくあんの仕込み始めが10月ごろ、千枚漬けは10~11月ごろにたっぷりと仕込まれていきます。正月を迎えて食卓にほしいのが白菜の塩漬けですが、12月の終わりごろの白菜が大変に食材としてはよくなっています。一度つけて味をしめると、毎年冬が待ち遠しくなるほど、この時期の白菜は最高になります。

近年では洋野菜というものを、日本料理の中に積極的に取り入れようという傾向があります。これも新しい世代へ移り変わる流れとして必要です。栽培技術の発達は大変なもので、輸入原種を日本人に合う野菜にして提供してくれることは、ありがたいことで料理文化の発展にも多くの影響をもたらしています。多くのお店では業務用の食材を仕入れる時には、信頼ができる業者から仕入れています。